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大阪地方裁判所 昭和59年(ワ)5999号 判決

原告(反訴被告)

江尻豊

ほか一名

被告(反訴原告)

福田敏雄こと姜東葉

主文

1  本訴原告(反訴被告)らの本訴被告(反訴原告)に対する別紙交通事故による損害賠償債務は、各自、金四六八万五、七八〇円及びこれに対する昭和五八年九月二〇日から支払済まで年五分の割合による金員を超えては存在しないことを確認する。

2  本訴原告(反訴被告)らのその余の請求を棄却する。

3  反訴被告(本訴原告)らは各自、反訴原告(本訴被告)に対し、金四六八万五、七八〇円およびこれに対する昭和五八年九月二〇日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

4  反訴原告(本訴被告)のその余の請求を棄却する。

5  訴訟費用は本訴反訴を通じてこれを五分し、その一を本訴原告(反訴被告)らの負担とし、その四を本訴被告(反訴原告)の負担とする。

6  この判決は第8項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  本訴請求の趣旨

1  本訴原告(反訴被告・以下原告という)らは本訴被告(属訴原告・以下被告という)に対し、別紙交通事故に基づく損害賠償として、各自、金三〇万円を超えては存在しないことを確認する。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  本訴請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの被告に対する請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

三  反訴請求の趣旨

1  原告らは各自、被告に対し、金二、八三二万五、四四二円およびこれに対する昭和五八年九月二〇日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

3  仮執行の宣言。

四  反訴請求の趣旨に対する答弁

1  被告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

第二当事者の主張

一  原告らの主張

(一)  事故の発生

原告江尻寛(以下、原告寛という)が保有し、原告江尻豊(以下、原告豊という)の運転する普通貨物自動車と原動機付自転車乗車中の被告との間で、別紙交通事故が発生した。

(二)  責任原因

原告豊には前方不注視の過失があるから民法七〇九条に基づく不法行為責任が、原告寛には自賠法三条に基づく運行供用責任がそれぞれ存在する。

(三)  損害

1 被告の負傷及び治療経過等

被告は、本件事故のため、頭部外傷Ⅱ型、右腓骨骨折、頸部捻挫等の傷害を負い、新生野優生病院において、昭和五八年九月一九日より同年一〇月二〇日まで入院加療し、以降通院している。

2 入院雑費 一万九、二〇〇円

一日六〇〇円の割合による三二日分。

3 慰藉料 三〇万円

(四)  結論

右の如く、被告の本件事故による損害は三〇万円を超えることはないものと考えるのに、被告は多額の賠償金を請求するため、本訴請求の趣旨記載のとおりの判決を求める。

二  原告らの主張に対する認否

(一)及び(二)は認める。

(三)のうち1は認め、その余は争う。

三  被告の主張

(一)  事故の発生

別紙交通事故が発生した。

(二)  責任原因

1 運行供用者責任(自賠法三条)

原告寛は、加害車を所有し、自己のために運行の用に供していた。

2 一般不法行為責任(民法七〇九条)

原告豊は、加害車を運転して直進するに際し、前方を十分に注視せずに加害車を走行させた過失により、本件事故を発生した。

(三)  損害

1 受傷、治療経過等

(1) 受傷

頭部外傷Ⅱ型、右頭頂部挫創、頸部捻挫、右腓骨骨折

(2) 治療経過

入院

昭和五八年九月一九日から同年一〇月二〇日まで

通院

昭和五八年一〇月二一日から昭和六〇年二月末日まで

(3) 後遺症

被告は、本件事故による傷害のため、局部に頑固な神経症状を残して昭和六〇年二月末日ごろ症状固定した。

2 治療関係費

(1) 治療費

新生野優生病院での治療費九一万四、三四〇円は原告らにおいて支払済であるため、大洋堂治療院の治療費二一万一、二〇〇円と、吾人天狗の治療費一九万二、〇〇〇円とを請求する。

(2) 入院雑費

入院中一日一、一〇〇円の割合による三二日分

(3) 入院付添費

入院中妻が付添い、一日三、五〇〇円の割合による三二日分

3 休業損害 金二、三九五万四、四九七円

被告は割烹あそこを経営し、開設店舗は大阪市生野区新今里及び同市阿倍野区西田辺の二店で、従業員はパートを含め両店合計で約一五名であつて、今里店の営業時間は正午から翌日午前三時まで、西田辺店は午後五時から午前二時となつている。

被告の業務は板前、仕入、営業全般にわたつているところ、比重の大きいのは、今里店における板前であり、午後五時から閉店の午前三時まで庖丁を握つていた。被告は、本件交通事故による受傷のため入院中はもちろん退院後も静止時、就寝時にはギブスを着用せねばならず、昭和五九年二月末頃までT字杖を使用して走行していたことから立ち仕事である板前の仕事ができなかつたものの、経営者であるために無理を押して調理場に入つて味付等を見たりしていたが、調理場は冷える為か痛みが出た。こうした状態のため、被告は実質的には昭和五九年二月末まで板前、仕入の仕事に就労できず、昭和六〇年二月末日までは制限された就労しかできなかつた。このように被告が就労できなかつたことによる損害は合計三、一三八万四、〇七八円である。

計算式

〈省略〉

年間売上上昇率

今里店 二〇・六%

西田辺店 三〇・〇%

年間売上上昇率平均二三・九%

売上予定額(昭和五八年九月~五九年八月)

今里店 八、二一二万三、七八八円

西田辺店 五、二九九万七、九九九円

合計 一億三、四四二万一、七八七円

昭和五八年九月から同五九年八月の一ケ年の予定売上額に小料理店の所得標準率三九・六%を乗じて被告の昭和五九年二月末日までの喪失所得を計算すると次のとおりになる。

5,322万2,216円×1/12(5+12/30)=2,395万4,497円

また、昭和五九年三月以降昭和六〇年二月末日までの喪失所得の一四%として計算すると次のとおりとなる。

5,350万8,227円×0.14×362/365=742万9,581円

4 工事遅延による損害

被告は、本件事故当時、今里店に隣接する借地上の家屋(大阪市生野区新今里四丁目二九番地の一、家屋番号参参四番、木造瓦葺平家建居宅、床面積三八・七四平方メートル)を内縁の妻である風本千春名義で買受け、同家屋を改築して今里店の店舗を拡大する計画を進め、年末の宴会シーズンに間に合うように工事着工は昭和五八年一〇月、完成は同年一二月一〇日の予定で不動産売買契約も終わり、改築工事の設計料の内金一〇〇万円の支払も終えていた。

ところが、本件交通事故により板前の仕事をする被告が受傷したために、今里店の人員配置さえ支障がでて、店舗の拡大は見合さざるを得ない状態となつた。その結果、予定より遅れて昭和五九年五月に増築工事に着工し、同年七月五日にやつと完成したが、当初の予定より七ケ月遅延した。これにより被告は次の損害を被つた。

〈1〉 不動産売買代金の金利相当分 金七八万二、四九五円

売買代金×ローン金利×七ケ月

一、四一五万円×〇・〇九八×7/12

〈2〉 設計料の金利相当分 金五万二、五〇〇円

設計料×金利×七ケ月

一〇〇万円×〇・〇九×7/12

〈3〉 地代の金利相当分 金九万二、七五〇円

一ケ月の賃料×七ケ月

一万三、二五〇円×七ケ月

〈4〉 合計 金九二万七、七四五円

5 後遺障害による逸失利益

被告の後遺障害による逸失利益は一億一、二七〇万四、三七九円となる。

計算式

被告の年間所得 五、三五〇万八、二二七円

労働能力喪失率 一四%

就労可能年数 二三年間

ホフマン係数 一五・〇四五

5,350万8,227円×0.14×15.045=1億270万4,379円

6 慰藉料 二六〇万六、〇〇〇円

内訳

入・通院慰藉料 七二万六、〇〇〇円

後遺障害慰藉料 一八八万円

7 弁護士費用 二五七万円

(四) 反訴請求

よつて、被告ら原告らに対し、内金として請求の趣旨記載のとおりの判決(遅延損害金は民法所定の年五分の割合による。)を求める。

四  被告の主張に対する認否

(一)及び(二)は認める。

(三)のうち1の(1)及び1の(2)の事実中、昭和五八年九月一九日から同年一〇月二〇日まで入院治療を受けたこと並びに2の(1)のうち一日単価一、五〇〇円の範囲内での治療費を認め、その余の(三)の事実はいずれも不知。

第三証拠

記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおり。

理由

第一事故の発生

別紙交通事故が発生したことは、当事者間に争いがない。

第二責任原因

一  運行供用者責任

原告寛が加害車を所有し自己のために運行の用に供していたことは、当事者間に争いがない。従つて、原告寛は、自賠法三条により、本件事故による被告の損害を賠償する責任がある。

二  一般不法行為責任

原告豊が加害車を運転して直進するに際し、前方を十分に注視せずに加害車を走行させた過失により本件事故を発生させたことは、当事者間に争いがない。従つて、原告豊は、民法七〇九条により、本件事故による被告の損害を賠償する責任がある。

第三損害

1  受傷、治療経過等

成立に争いのない甲第一〇、第一一号証、乙第三二ないし第三四号証、鑑定結果、被告本人尋問の結果、当事者間に争いのない事実によれば、被告の主張(三)1(1)(2)の事実が認められ、鑑定結果によれば、後遺症としてレ線上右腓骨遠位端部(外踝部)に軽微な骨萎縮像が認められ、同部の運動機能制限は関節機能に障害を残すものとはいえないものの、外踝部に疼圧痛を残し、自賠法施行令別表一四級一〇号に該当する神経症状を残して症状が固定(昭和六〇年二月二五日頃固定)したことが認められ、右認定に反する甲第一二号証の記載部分は前記乙第三二号証、鑑定結果に比し措信できず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

2  治療関係費

(一)  治療費

成立に争いのない乙第三三号証、第三四号証、証人風本千春の証言、被告本人尋問の結果によれば、被告は、生野愛和病院退院後、昭和五九年末頃までT字杖を使用して歩行し、その後も調理場で稼働せざるを得なかつたことから、右足関節部が腫張し、疼痛があつたが、右治療のため、被告の意思により同病院医師の制止を振切つて退院したことによる感情のもつれから同病院に通院できなくなつた結果、今里店の近隣に所在し、仕事の合間に通院し得る大洋堂治療院及び吾人天狗において、マツサージ、鍼の治療を受けたこと、右の治療は、昭和五八年一〇、二五日から昭和六〇年二月一八日までの間、月間合計三、四回の割合で通院し、一回につき少なくとも一、五〇〇円の治療費を要したこと、右の鍼マツサージ治療は被告の疼痛症状をやわらげる治療法としては、相当の効果があつたことが認められる。

右によれば、被告は右治療費として、少なくとも、七万二、〇〇〇円の費用を要したことが認められる。

(二)  入院雑費

被告が三二日間入院したことは、前記のとおりであり、右入院期間中一日一、一〇〇円の割合による合計三万五、二〇〇円の入院雑費を要したことは、経験則上これを認めることができる。

(三)  入院付添費

前記被告の受傷の部位、程度、治療経過と経験則によれば、被告は前記入院期間中三二日間付添看護を要し、その間一日三、五〇〇円の割合による合計一一万二、〇〇〇円の損害を被つたことが認められる。

3  休業損害

成立に争いのない甲第一〇号証、第一一号証、乙第三二号証、被告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる乙第一号証、証人風本千春の証言、被告本人尋問の結果によれば、被告は本件事故当時四二歳であつて、本件事故のため頭部外傷Ⅱ型、右頭頂部挫創、頸部捻挫、右腓骨骨折の傷害を受け、新生野優生病院(後に生野愛和病院と病院名変更)に救急入院し、右足をギブス固定(昭和五八年一〇月七日除去)するとともに頸部などの湿布、点滴、投薬治療を受けたが、同病院医師は被告に対し少なくとも入院三か月を要する旨伝えたこと、ところが、被告は、料理店の経営者であるとともに調理も担当し、今里店の拡張計画も進んでいたため長期の入院を嫌い、医師が引き止めたのを振切つて昭和五八年一〇月二〇日退院し、それまで稼働していた板前としての味付け、レジ計算、仕入、営業、従業員の監督などの仕事のうち、退院後一か月間は調理場で味付けの仕事、従業員の監督のみを行ない、退院後二か月目から松葉杖なしで三時間程度の立仕事ができるようになり、続いて、昭和五九年一月の中旬ごろからは松葉杖が不要となつたことから、包丁を使い、寿司も握り、立仕事ができるようになつたこと、しかし、昭和五九年夏ごろに痛みがやわらぐまでは事故前の仕事量をこなすことは不可能であつたこと、ところが、昭和五九年一二月二〇日ごろ、本件事故により負傷した右足首に激痛があり、鍼、マツサージの治療に頻繁に通わざるを得なくなり、昭和六〇年二月二五日生野愛和病院で受診した結果、症状固定の診断がなされたこと、被告は割烹「あそこ」を経営し、店舗として今里店及び西田辺店の二店を開設し、従業員は両店あわせて常時約一五名前後であるが、西田辺店での仕入以外の経営者としての業務は被告の妻が行ない、被告は、専ら、今里店において経営者として経営全搬を管理、監督するとともに、板前としても働き、かつ、営業行為も行なつていたこと、今里店における売上高をみると、昭和五七年九月度四七六万四、六一〇円(その他、昼間営業は五四万〇、三二〇円)、同年一〇月度五五〇万七、五九〇円(同四四万二、八六〇円)、同年一一月度五九八万〇、八一〇円(同、三五万八、二八〇円)、同年一二月度八三九万二、九六〇円(同、五一万八、八二〇円)、昭和五八年九月度四五五万一、四九〇円(その他、昼間営業は被告の本件事故による受傷入院のため本件事故後に休業)、同年一〇月度五七二万六、〇九〇円(昼間右同じ)、同年一一月度五七五万九、七一〇円(昼間右同じ)、同年一二月度八九三万四、五一〇円(昼間右同じ)であつたこと、本件事故以前に営業されていた今里店の昼間営業は、被告の本件事故による受傷のため行なわれなくなつたこと、右の期間中の今里店における経費率は本件事故前後の間に大きな差異はないこと、以上の事実が認められ、右認定を覆すに足る証拠はない。

右事実によれば、被告が主として稼働していた今里店の本件事故後の売上げ金額は、昭和五七年の同時期と比較して差異はほとんどなく、売上げ金額の対前年伸び率を考慮に入れても、昼間に宮業しなかつた金員程度が売上げ金額の低下となつて表われていることが推認されるのみである。ところで、被告が請求する休業損害は、事故前の所得をもとにこれを算出して請求するのであるが、右認定の如く、本件事故のため昼間に営業することができなかつたことを別にすれば、被告の経営する割烹「あそこ」は、被告の休暇中も他の従業員によつて営業されており、また、前年同時期と比較して売上げ金額に差異がなく、経費率も変らないというのであるから、被告の休業損害を算定するにあたつて事故前の被告の営業所得、すなわち、従業員も含めた組織としての営業利益をもとにこれを算出するのは妥当でなく、むしろ、同店における被告個人の労働に対する固有の潜在的労働力の評価をもとにこれを算出するのが相当である。被告の潜在的労働力を評価するにあたつては、通常、組織としての営業利益を前提に、被告の、右営業利益にしめる、労働の寄与率を掛けて算出するのであるが、被告は割烹「あそこ」を経営し、二店を開設していたが、西田辺店の実質的経営は被告の妻に委ねられ、今里店の経営は名実ともに被告が運営していたものの、従業員が多数働き、売上げ額も多額であつて、かつ、被告の経営する飲食店は、個人経営というよりも、むしろ組織体としての要素の強い経営形態の飲食店であることの認められる本件では、被告の寄与率を算定することは困難であつて、立証責任の原則から、被告は、同店において、少なくとも被告と同年代男子労働者産業計、企業規模計、学歴計平均賃金である年収四八三万七、七〇〇円以上の労働をしていたことの認められる本件では、右金員を基礎に、被告の休業損害及び将来の逸失利益を算定するのが相当である。

そこで、これをもとに被告の休業損害を考えるに、右事実によれば、被告は、本件事故のため、受傷後昭和五八年一〇月二〇日までの一か月間は一〇〇%、その後一か月間は七〇%、昭和五八年一一月二〇日ごろから昭和五九年一月二〇日ごろまでは五〇%、同日ごろから同年六月二〇日ごろまでは三〇%、その後、昭和五九年一二月二〇日ごろまでは事故前と同様の労働に従事し得たものの、同日ごろから昭和六〇年二月二五日ごろまでの間は五〇%の各休業を余儀なくされ、合計金二〇九万六、三三六円(円未満切捨て。以下同じ)の休業損害を被つたものと認められる。

計算式

483万7,700円÷12×(1+1×0.7+2×0.5+5×0.3+2×0.5)=209万6,336円

4  工事遅延による損害

証人風本千春の証言によれば、被告は今里店の増築を計画し、昭和五八年四月に隣接する建物を借地権付で買入れ、同年夏ごろには設計図が作成され、いよいよ昭和五八年九月から増築工事を開始し、同年一二月の宴会シーズンまでに工事を完了させる予定であつたのに、被告が本件事故に遭遇して入院したため、増築工事の着工を遅らせざるを得なくなり、昭和五九年五月に至つて増築工事に着工、同年七月ごろ完成して同年八月末ごろ引渡しを受けたが、設計料一五〇万円のうち、一〇〇万円については本件事故以前に既に支払つており、かつ、今里店の増築工事が遅延したことにより昭和五八年末の売上げ増加が思うようにできなかつことが認められる。

右事実によれば、本件事故のため今里店の責任者であつた被告が入院したことにより、同店の増築計画が約九か月遅延し、そのため、増築した際における今里店の売上げ増がなかつたことが認められるものの、全証拠によるも、被告の主張する如く、不動産売買代金、設計料、地代の各金利分について損失を受けたとの証明はなく、また、増築工事が計画通りに進行し、昭和五八年一二月から営業を始めることができた際の売上げ増加金額を認定することもできない。本件では、今里店の増築工事遅延による損害は、被告の、これによる悔恨を慰藉するために慰藉料として右事由を考慮することができるものの、これを本件事故による損害として認めることはできない。

5  将来の逸失利益

前記認定の労働力に対する評価および前記認定の受傷並びに後遺障害の部位程度によれば、被告は前記後遺障害のため、昭和六〇年二月二五日から少くとも二年間、その労働能力を五%喪失するものと認められるから、被告の将来の逸失利益を年別のホフマン式により年五分の割合による中間利息を控除して算定すると四五万〇、二四四円となる。

計算式

483万7,700円×0.05×1.8614=45万0,244円

6  慰藉料

本件事故の態様、被告の傷害の部位、程度、治療の経過、後遺障害の内容程度、その他諸般の事情を考えあわせると、被告の慰藉料額は一五〇万円とするのが相当であると認められる。

第四弁護士費用

本件事案の内容、審理経過、認容額等に照すと、被告が原告らに対して本件事故による損害として賠償を求め得る弁護士費用の額は四二万円とするのが相当であると認められる。

第五結論

よつて原告らは各自、被告に対し、四六八万五、七八〇円、およびこれに対する本件不法行為の翌日である昭和五八年九月二〇日から支払済まで年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があり、原告らの本訴請求及び被告の反訴請求は右の限度で正当であるからこれを認容し、その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条、仮執行宣言につき同法一九六条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 坂井良和)

別紙交通事故

1 日時 昭和五八年九月一九日午前二時五五分頃

2 場所 大阪市生野区中川一丁目五番一号先路上

3 加害車 普通貨物自動車(泉四五ち七二一二号)

右運転者 原告豊

4 被害車 原付自転車(大阪市生う三六九三号、以下、被害車という)乗車中の被告姜

5 態様 加害者が南北道路を南進中、先行する被害車に追突した。

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